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  • 「弱い。だから挑むんだ」 東大アメフト部 大学日本一への挑戦 第13話/全66話(予定)

     あれ? イメージとぜんぜん違う。  東京大学アメフト部で2017年度の主将を務める遠藤翔は、心の中で首を傾げていた。  新ヘッドコーチに就任した森清之の指導は、どちらかと言えばスパルタ教育寄りだと想像していたからだ。これから春になって授業が始まれば、練習を優先しろとけしかけられるのではないか。日々の練習では、極限まで追い込まれるに違いない。 「昔の京大でアメフトをやっていた方ですか …
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  • 「弱い。だから挑むんだ」 東大アメフト部 大学日本一への挑戦 第12話/全66話(予定)

     東京大学アメフト部の新監督に就任した三沢英生の所信表明が、部の公式フェイスブックに投稿されたのは2017年2月22日。熱い思いが溢れ出すような文面だ。 私たちのミッションは「日本一」であり、日本一を目指すにあたってのメソッドは「世界標準」です。その礎として、私は東大フットボールが掲げるべき理念を以下のように定めました。「未来を切り拓くフットボール」(中略)東大フットボールが最高の指 …
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  • 「弱い。だから挑むんだ」 東大アメフト部 大学日本一への挑戦 第11話/全66話(予定)

     森清之がヘッドコーチを務めてきた鹿島ディアーズは、LIXILディアーズに生まれ変わった※。住宅設備大手の株式会社LIXILがメインスポンサーとなり、企業チームからクラブチームへと形態を変えたディアーズの運営資金をLIXILなどの企業が援助する関係だ。2014年のことである。  鹿島建設アメフト部が廃部になった時点で、ディアーズから円満に離れようとしていた森だが、結局はヘッドコーチ留任の話を飲むこ …
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  • 「弱い。だから挑むんだ」 東大アメフト部 大学日本一への挑戦 第10話/全66話(予定)

     京都大学アメフト部を離れる2000年まで、森清之が知る日本アメフト界のカルチャーは京大アメフト部のそれだけだった。だからこそ貴重だったのが、さまざまなチームからさまざまな選手たちが集まる日本代表でのコーチングスタッフとしての経験だ。森は01年から鹿島ディアーズのヘッドコーチを務めるかたわら、03年の夏は「世界選手権」に出場する日本代表のオフェンスコーディネーターを任された。  国際ア …
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  • 「弱い。だから挑むんだ」 東大アメフト部 大学日本一への挑戦 第9話/全66話(予定)

     1997年夏にNFLヨーロッパから日本に戻った森清之は、年内の残り3カ月だけ、アサヒビール株式会社がスポンサードするアメフトのクラブチーム、シルバースターでコーチを務める。当時のアサヒビール代表取締役会長で京都大学アメフト部の後援会会長でもあった樋口廣太郎に、京大アメフト部監督の水野彌一経由でコーチ就任を要請されたのだ。  森は1998年から京大アメフト部に復帰すると、続く99年も水野監督 …
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  • 「弱い。だから挑むんだ」 東大アメフト部 大学日本一への挑戦 第8話/全66話(予定)

     京都大学アメフト部の専任コーチを、森清之は、23歳からのおよそ10年間務めている。コーチとしての経験不足を、森が自覚できたのは、自分自身で経験を積んでからだった。 「30歳になるか、ならないかくらいまでは、指導スキルも知識も足りず、情熱だけが取り柄でした」  当時は練習中に熱くなり、選手と取っ組み合いになることすら、ざらにあった。 「時代がそういう時代でしたよね。たとえ選手のほうから …
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  • 「弱い。だから挑むんだ」 東大アメフト部 大学日本一への挑戦 第7話/全66話(予定)

    「お前、コーチやらんか?」  京都大学アメフト部の監督を長きに渡って務める水野彌一にそう言われて、森清之は二つ返事でギャングスターズの専任コーチとなる。1989年の夏だった。  そこから遡ること5年と少し前に、森が京大アメフト部に入部したのは、いわゆる体育会系とは明らかに一線を画するギャングスターズのカルチャーに強く興味を惹かれたからだ。独特のそのカルチャーは、打倒関学(関西学院大学 …
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  • 「弱い。だから挑むんだ」 東大アメフト部 大学日本一への挑戦 第6話/全66話(予定)

     1988年、森清之は京都大学の5年生になる。アメフトに打ち込みすぎて4年では卒業できず、留年を余儀なくされていたのだ。入部から5年目となったギャングスターズではコーチに就任し、後輩たちをサポートする側へと回る。  瞬く間に時は過ぎてゆき、大学での5年目を終えて京大を卒業する日が近づいてきた。人生の節目を前にして森は決めていた。アメフトはもう十分やり切った。大学を卒業するこのタイミ …
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  • 「弱い。だから挑むんだ」 東大アメフト部 大学日本一への挑戦 第5話/全66話(予定)

     京大に入学した森清之がアメフト部に入部したもうひとつの理由は、そこが関西だったからだ。 「当時、大学スポーツの花形は、東京六大学野球を別格とすると、漠然とした印象ではラグビーでした。国立競技場が満杯になったラグビーの早明戦をテレビで観たりしていましたからね。だから、関西の大学スポーツではアメフトがいちばんメジャーだと、京大に入るまでまったく知らなかった。関西ローカルですけど試 …
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  • 「弱い。だから挑むんだ」 東大アメフト部 大学日本一への挑戦 第4話/全66話(予定)

     森清之がその試合を観たのは、大学受験のために浪人中の1984年1月3日のことだった。少し息抜きでもするかとテレビの電源を入れ、チャンネルを変えていると、NHKでアメフトの試合が中継されている。当時の森は、地上波で放映されていたNFLのスーパーボウルをなんとなく観たことはあったが、アメフトのルールはごく初歩的なものだけを、かろうじて知っている程度だった。  森はへぇと思った。京都大学が社 …
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