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言語化ラボ&
アーカイブ
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東大アメフト物語
学生たちの部活動であるウォリアーズに、一般企業の株式会社ドームはどう関わるべきなのか――。2017年の年の瀬のある日、小笹和洋は自分の懸念を三沢英生に伝えた。三沢は、なるほどね、そうだよね、と相槌を打ちながら、小笹の懸念をすぐに理解した。 このような経緯があり、それで誕生したのが、学生のマーケティングスタッフだ。ウォリアーズのマーケティング活動を、現役の学生が主体となって展開して …
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東大アメフト物語
小笹和洋が新体制のウォリアーズに関わりはじめたのは、監督の三沢英生が常務取締役を務めていた、そして2017年からフルパッケージでウォリアーズをサポートするようになっていた株式会社ドーム(アメリカの大手スポーツメーカー「アンダーアーマー」の日本総代理店)に、小笹が入社した2017年の秋からだ。かつて自分もプレーしていた東大アメフト部に、小笹は2017年シーズンの途中から関わることになったの …
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東大アメフト物語
2018年5月上旬から急速に広がった日大問題の波紋がようやく消えかける頃、好本一郎が中心となって煮詰めてきたウォリアーズ支援のための法人設立構想は、具体的な仕組みとして可視化できるようになっていた。 誤解してはならないのが、ウォリアーズそのものを法人化するわけではないということだ。一般財団法人の東京大学運動会に所属しているアメリカンフットボール部を、別の法人組織として独立させる …
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東大アメフト物語
2018年の春のオープン戦は、明治学院大学を40-0で下した4月22日の初戦を皮切りに、6月23日の防衛大学校戦まで2カ月続いた。 ○東京大学 40-0 ●明治学院大学(2018年度の明治学院大は関東2部所属) ●東京大学 24-25 ○国士舘大学(2018年度の国士舘大は関東1部下位のBIG8所属) ●東京大学 14-28 ○京都大学(2018年度の京大は関西1部所属) ○東京大学 28-14 ●中央大学(2018年度の中央大は関 …
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東大アメフト物語
話は2017年秋のBIG8にさかのぼる。 観客席でウォリアーズの試合を観戦していた好本一郎は、近くの席から聞こえてくるOBたちの会話が気になり、アメフトの試合に集中しきれずにいた。会話の主たちは、どうやら監督の三沢英生に不信感を抱いているようだった。 耳にしたのは不穏な会話だけでない。三沢に当てつけるような野次を、好本が聞いたのも一度や二度ではなかった。 とくに5戦目の国士舘大学戦 …
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東大アメフト物語
三沢英生が手術のために入院していた頃、ウォリアーズの面々は新入部員の勧誘に焦点を合わせていた。リクルーティングが東大のひとつの生命線となる理由は、スポーツ推薦も付属高もないからであり、最難関の受験を突破した合格者の中から人材を集めなければならないからだ。 その宿命は昔から――三沢が監督になる前から――変わらない。しかし、学生たちの意識は変わっていた。彼らの意識を変えるために優先 …
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東大アメフト物語
鷲掴みにされるとはこのことか。心臓を強く締めつけられている――。 三沢英生の巨体が悲鳴を上げ、勤務中に救急搬送されたのは、ウォリアーズが横浜国立大学に敗れてからそろそろ2週間という2017年12月15日の日中だった。 その少し前、身体の不調を感じていた三沢は、会議と会議の間のわずかな空き時間に短い休息を取っていた。オフィスチェアの背もたれに大きな上半身を預け、目をつぶり、呼吸を整えよ …
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東大アメフト物語
2018年を迎えて、トレーナーチームは生まれ変わろうとしていた。その牽引車となっていたのが、新4年生の川西絢子だ。 <今年は結果を出さなきゃいけない。勝ちたい> 川西は心に強い思いを秘めていた。トレーナーチームを変えて良かった。みんなにそう思ってもらうためにも、今年は勝ちたい。 川西たち学生トレーナーは、ヘッドトレーナーの西田成美と意見を交換しながら、役割をどう分担していくか整 …
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東大アメフト物語
どうすれば、東大生のフィジカルを、できるだけ短期間で強化できるのか――。 ウォリアーズのパフォーマンスコーチ、酒井啓介は、より緊密な連携や、双方向の対話が必要だと感じていた。 そこで2018年1月から、「フィジカルミーティング」と銘打ち、連携・対話の場を設けるようにした。ヘッドコーチの森清之をはじめとして、ヘッドトレーナーの西田成美、学生トレーナーの代表者、栄養士の田中初紀、さら …
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東大アメフト物語
2017年12月3日の横浜国立大学戦を最後に遠藤翔の代は引退し、新4年生たちは遠藤の後任となる主将を決めるための話し合いを始めた。新主将候補は4人いた。しかし、それぞれ学業、性格、怪我などを理由に挙げて、率先してその大役を引き受けようとする者はいなかった。楊暁達も最初は、俺は怪我をしていたからと、煮え切らない態度を取っていた。 ヘッドコーチの森清之は何も口出ししなかった。もちろん …
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