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アーカイブ
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東大アメフト物語
平賀慎之介がアメフトにのめり込むようになったのは高校生の頃、深夜に放送していたNFLの試合を、定期的に観るようになってからだ。 父親の仕事の関係で、平賀は4歳から10歳までをアメリカで過ごしている。しかし、学校が終わった放課後にタッチフットで遊ぶぐらいで、アメフトの熱心なファンだったわけではない。日本に帰国すると野球を始めて、中高は野球部に所属した。 テレビで観ていたNFLでニュー …
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東大アメフト物語
アメリカンフットボールのチーム練習には“進行台本”がある。目を通せば、その日に練習する作戦を、一通り確認できる。進行台本にしたがって、実際にみんなで動いてみて、タイミングや距離感を合わせ、プレーの精度を上げていく。 「僕らはその台本を、スクリプトと呼んでいます」 そう話すヘッドコーチの森清之は、2人のコーディネーターに攻守それぞれのスクリプト作りを任せている。 「コーディネータ …
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東大アメフト物語
秋の公式戦は2週に1試合のペースで進む。全部で7試合を戦うが(入れ替え戦に進出できれば計8試合)、対戦校はすべて異なるので、7試合それぞれの対策を事前に練っておかなければならない。最初の試合が近づけば、その試合に特化した対策を、選手たちに“インストール”していく。その先は2週間単位で「特化した対策のインストール→試合」というサイクルを繰り返す。 対戦相手の分析は試合の映像を頼り …
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東大アメフト物語
6月下旬に春のオープン戦が終わると、3週間ほどの試験休みを挟み、練習再開後は秋の公式戦に向けての準備が本格化していく。2018年秋のウォリアーズの初戦は9月8日に予定されている。 準備にも順序がある。まずは基本的な戦い方を確立しておかなければならない。対戦相手がどこであろうと、今年の東大はこういうオフェンスをしていく、こういうディフェンスをしていく、こういうキッキングをしていく …
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東大アメフト物語
栄養士の田中初紀は定期的に、2週間に一度は、川西絢子たちと会って話をするようにしていた。ウォリアーズの選手たちを、いちばん近くで毎日見ているのが、川西をパート長とする学生トレーナーたちだからだ。 「最近、あいつ、あんまり食べてなさそうです」 「別のこいつは、体重がちょっと増えすぎている気がします」 選手の身になり、伴走している学生トレーナーたちの話は、栄養士の田中にもとても貴 …
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東大アメフト物語
主将の楊暁達は驚いていた。4年生全員のミーティングでは押し黙っていた同期も、1対1の対話となれば、けっこう話す。こいつ何も考えてないんじゃないかと、楊が疑っていた同期も、実はいろいろ思案しているのだとわかってきた。 「俺ってさ、試合に出てないじゃん。そういうヤツが偉そうに発言したら、チームの士気を下げちゃうんじゃないかと思ってさ」 そんなふうに悩みを打ち明けてくれる同期の気持 …
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東大アメフト物語
4年生の学生トレーナー川西絢子が、ウォリアーズに入部したのは2015年の春だった。1年生の間は、頭に叩き込んでおかなければならない、身体の構造から、筋肉などの機能、そして怪我についてのあれこれまで必要な知識を獲得しながら、そうした知識を、先輩のトレーナーがテーピングを巻いたり、リハビリを補助したりする姿を見て、使える知恵として自分の中に落とし込んでいった。やらなければならないこと …
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東大アメフト物語
2018年春のオープン戦は3勝4敗の負け越しに終わったが、試合ごとに内容を振り返るレビューを通して、秋に向けての課題がはっきり見えてきた。チーム全体が連動しているかと言えば、その精度はまだ低い。しかし、プレーのタイミングや距離感を合わせる練習を後回しにしているので、そこの不足はやむをえない。 主将の楊暁達はむしろ、タックルやブロックの改善を実感できていた。1年前と比べると、チー …
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東大アメフト物語
1997年の春に東大生となった小笹和洋は、アメフトにのめり込む。3年生になると、それこそ24時間365日アメフト漬けの日々に明け暮れた。 ウォリアーズは三沢英生の次の代が4年になった1996年にプレーオフ初出場を果たしていたが、小笹が入部した1997年以降は毎年その手前で敗れ去っていた。小笹が2年の時は東海大学に1点差で敗れ、3年の時は帝京大学に敗れ、これらの敗戦が響き、どちらの年もプレーオ …
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東大アメフト物語
時は1995年の秋――。関東1部リーグのBブロックを戦う東大ウォリアーズは、4勝1敗で最終節を迎えていた。最終節で対戦する東海大学に勝てば、自力でプレーオフ進出を決められる。三沢英生は東大の4年生になっていた。 関東1部リーグは、2014年から上層の「TOP8」(8チーム)と下層の「BIG8」(8チーム)の2層構造となるまで、「Aブロック」(7チーム)と「Bブロック」(7チーム)を並列させる …
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