EFFICACY
効能書き04
社会価値
言語化の「効能」
こんな症状に…
- 企業の社会価値への認知度が低い
- 仕事への誇りや働き甲斐が不足している
- 人材市場へのアピールが不十分
こんな効き目が…
- 社内外でファンが増える
- ロイヤルティも高まる
- 人材市場にアピールできる
「共通言語」の文脈を活用したい
あらゆる企業に、独自の社会価値がある。
これが「ESSENTIAL FORCE言語化」の前提としている想定です。
世のため、人のためになっている。
それゆえ存在できているはずだ、という想定です※。
それなのになぜ、という疑問も拭えません。
企業ごとの社会価値の認知度に、どうして大きな違いが出てくるのでしょうか。
理由は一つではないでしょう。
しかし、もっとも根本的な理由は一つだけかもしれません。
言語化不足です。
独自の社会価値を言語化していなければ、あるいは伝わるように言語化できていなければ、伝わるはずがありません。
思考を本質まで深めて、自社独自の社会価値を捉えてきたか。
強く響くように、あるいは深く刺さるように表現してきたか。
つまり、言語化という取り組みにどれだけ力を注いできたか。
その違いが、認知度の違いを生じさせていると考えます。
世のため、人のためになっている。
言い換えれば、社会に価値をもたらしている、ということです。
社会に善をもたらしている。
全力で伝えるべきなのは、この事実でしょう。
問われるのは伝え方です。
どうやって伝えるか。
より伝わりやすいのはSDGs、CSV、ウェルビーイングといった、すでに共有されている社会価値の文脈を活用する方法です。
英語だけを理解する人には、英語で伝えたほうがはるかに伝わりやすい。
だから英語を使うという、選択の仕方に似ています。
伝えたいのは「社会に善をもたらしていること」です。
であれば、企業の社会価値を表現しやすいSDGsなど「共通言語」の文脈に乗せたほうが、伝わりやすくなるということです。
広い世の中には“まともではない企業”も存在しているのかもしれません。しかし遅かれ早かれ、そうした企業は淘汰されていくと「ESSENTIAL FORCE言語化」では考えます。さらには世のため、人のために存在している企業だけの社会になってほしいと願います。避けるべきなのは、世のため、人のために存在しようとしている真っ当で優良な企業なのに、言語化不足のせいで独自の価値が周知されず、淘汰されてしまう事態です。
社会価値と社会課題の
一覧表=SDGs
SDGs(Sustainable Development Goals)とは、国連総会が2015年9月に採択した国際的な目標です。
Sustainable Development Goalsは「持続可能な開発目標」を意味し、
17の大きな目標と169の具体的なターゲットで構成されています。
国連総会での採択の背景にあるのは強い危機感です。
ただでさえ平和や人権をはじめとする多くの社会問題が未解決であるうえに、
気候変動がこのまま続けば地球が壊れてしまう、人類の存続も危ぶまれるという危機感です。
ここではこれ以上踏み込みませんが、地球環境問題はすでに切羽詰まった局面を迎えている、
そしてウェルビーイングとはかけ離れた厳しい世界に生きる人々も少なくないと、認識しておくべきです。
SDGsとは大切な地球を協力して守りながら、未来の人々を含めた誰もがより良く生きられる世界へ、
社会のあり方を変えていくために共有する目標であり、指標と言えます。
目標を達成していけば、地球や世界は良くなっていくという想定ですから、
国連という国際機構のお墨付きを得た社会価値の一覧表がSDGsとも言えるでしょう。
企業がもたらせる独自の社会価値をSDGsの文脈に乗せて表現していけば、
社会にどのように善をもたらそうとしているのか、意図や手法をよりわかりやすく伝えられます。
同じコインの裏側を見てみると、SDGsは解決が待たれる社会課題の一覧表とも言えます。
社会課題の解決を起点としてビジネスを創っていくアウトサイドインの発想を膨らませていくために、
SDGsの詳細を参照し、社会にもたらす価値を表現していく。そんな順序の言語化もありえます。
CSV(Creating Shared Value)やESG(Environment/Social/Governance)も、
企業の社会価値を伝えるための共通言語と見なせます。
「共通価値の創造」と訳されるCSVは、企業が社会課題を解決しながら利益を上げていることを示すいわばワッペンのようなものです。
このワッペンをつけた企業を一括りにすると「CSV企業」と言えるでしょうし、
「CSV経営モデル」というカテゴライズの仕方もできるでしょう。
ESGは、投資家や金融機関が企業を評価するための新たな指標です。
地球環境(Environment)にどれだけ配慮しながら、社会課題(Social)の解決にどれだけ貢献しているか、
社内のガバナンス(Governance)は健全か、という非財務的な情報を投資家や金融機関がそれぞれの投資判断に活かします。
ウェルビーイング追求の
言語化にも価値がある
「17」のゴールを設定しているSDGsのゴール3は、次のように表現されています。
「Ensure healthy lives and promote well-being for all at all ages
(あらゆる年齢の全ての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する)」
日本語訳で「福祉」と表現されているのがウェルビーイングです。
Well-beingの直訳は「良い状態」です。
ある人が心身ともに健康で、自分らしく、生き生きしている、満たされた状態。
そのような状態が「良い状態」であるという定義も成り立つかもしれません。
SDGsが想定しているのは「あらゆる人々のウェルビーイング」です。
あらゆる人々が心身ともに健康で、自分らしく、生き生きしている、満たされた状態。
そのような“全員Well-being世界”を目指すには、多様な個性を認め合えるコミュニティを増やしていかなければならないでしょう。
必要なのは、多様な価値観を認め合える寛容さであり、多様なウェルビーイングが共生できるコミュニティです。
会社もコミュニティのひとつです。
コロナ禍で働き方も変化してきたとはいえ、多くの人にとってはいまだに長い時間を過ごす場所でもあるでしょう。
全員Well-being世界を見据えて、誰もが寛容なコミュニティを実現するための言語化を進め、
言語化されたその情報を積極的に社会に開示する。
開示した情報をある種のコミットメント(約束)として、ウェルビーイングを追求する企業が増えていけば、
ウェルビーイングな社会に少しずつでも近づいていくはずですし、ウェルビーイング追求はその企業の魅力にもなるでしょう。
コミュニティとしての企業が、どのようにウェルビーイングを追求し、実現しようとしているか。
その言語化自体にも価値があるということです。
社員の働き甲斐や
自信にも繋がってくる
多くの人から応援される企業になっていくためにも、社会にもたらしている価値の言語化に力を注ぐべきでしょう。
近頃よく耳にするようになったのが「エシカル消費」というキーワードです。
地球環境にきちんと配慮しながら、社会に貢献している商品やサービスを、できるだけ優先して応援していく消費行動を指しています。
エシカルとは「倫理的」という意味です。
サステナビリティに特化したコンサルティングファームを運営し、
ウェルビーイングの実現を追求されている田瀬和夫さんは、ご自身の著作にこう記されています。
ミレニアル世代やZ世代を中心に、消費に対する価値観が変容してきており、社会課題に配慮した購入行動は今後主流化していくことも予想されます。
ある定義によるとZ世代とは1990年代後半から2000年代に生まれた世代を指し、ミレニアル世代は1995年以降に子ども時代を過ごした世代を指すそうです。
田瀬さんは次のようにも記されています。
(前略)Z世代と呼ばれる若者は、企業のサステナビリティに対する取り組みに強い関心を持ち、これまでの世代とは違う観点で企業を見定める人が多いと考えられます。
いわゆる人材市場に企業の魅力を伝えていくためにも、社会にもたらしている、
あるいは社会にもたらそうとしている価値を言語化していく必然性が高まっていると言えるでしょう。
どのように地球環境の保全に配慮していて、どのような社会課題の解決に企業独自の価値を活かそうとしているのか、
企業の社会価値をSDGsなどの文脈に乗せて言語化していけば、おそらくは従業員のモチベーションにも繋がります。
人は「なぜ」を求めたがる生き物だからです。
なぜ、この会社で働いているのか?
何のために?
「世のため、人のためになっている」ことがきちんと言語化されていれば、社員一人ひとりの働き甲斐に繋がってくるでしょう。
自分の仕事や会社に誇りや自信を持てるようにもなるでしょう。
企業の社会価値を言語化していけば、社内外でファンが増えていき、ロイヤルティ(愛着。大切に思う気持ち)も高まっていく。
大きなその第一歩となるはずです。
主要参考文献※
本テキストは、筆者(株式会社EDIMASS代表取締役・手嶋真彦)が拝読してきた文献からインスパイアされて執筆したものです。主要参考文献のほかにも多くの文献から学び、触発されてまいりましたことをここに記し、すべての文献執筆者に深い敬意と謝意を表します。
- 田瀬和夫・SDGパートナーズ 『SDGs思考 2030年のその先へ 17の目標を超えて目指す世界』 インプレス 2020
- 沖大幹・小野田真二・黒田かをり・笹谷秀光・佐藤真久・吉田哲郎 『SDGsの基礎 なぜ、「新事業の開発」や「企業価値の向上」につながるのか』 事業構想大学院大学出版部 2018
- 村上周三・遠藤健太郎・藤野純一・佐藤真久・馬奈木俊介 『SDGsの実践 持続可能な地域社会の実現に向けて 自治体・地域活性化編』 事業構想大学院大学出版部 2019
- 名和高司 『CSV経営戦略 本業での高収益と、社会の課題を同時に解決する』 東洋経済新報社 2015
- 渡邊淳司/ドミニク・チェン監修・編著 『わたしたちのウェルビーイングをつくりあうために ――その思想、実践、技術』 ビー・エヌ・エヌ新社 2020
- 鎌田華乃子 『コミュニティ・オーガナイジング ほしい未来をみんなで創る5つのステップ』 英治出版 2020
- ニコラス・D・クリストフ&シェリル・ウーダン 『ハーフ・ザ・スカイ 彼女たちが世界の希望に変わるまで』 北村陽子訳 英治出版 2010
- ジャクリーン・ノヴォグラッツ 『ブルー・セーター 引き裂かれた世界をつなぐ起業家たちの物語』 北村陽子訳 英治出版 2010
- 森川潤 『グリーン・ジャイアント 脱炭素ビジネスが世界経済を動かす』 文藝春秋 2021
- 細田悦弘 『選ばれ続ける会社とは サステナビリティ時代の企業ブランディング』 産業編集センター 2019
- 山本康正 『世界を変える5つのテクノロジー――SDGs、ESGの最前線』 祥伝社 2021
社会価値言語化の「効能」