EFFICACY
効能書き03
新たな顧客像
言語化の「効能」
こんな症状に…
- 特定の顧客の顔しか思い浮かばない
- 顧客の新規開拓に限界を感じている
こんな効き目が…
- 既存の価値の値打ちが変わる
- 新商品·新サービスを発掘·開拓しやすくなる
変化の波に呑み込まれないための
顧客像の上書き
ネガティブに作用する「逆機能」は、言語化にもあります。
「我が社の価値はここにある」
「お客様はこういう方だ」
言語化されたそうした価値や顧客像にとらわれすぎれば、
時代の変化や社会環境の変化という波に呑み込まれ、
溺れてしまいかねません。自縄自縛の怖さです。
浮かんでくるお客様の顔がはっきりしてからの顧客像の追加更新は、とりわけ容易ではありません。
大きな成功体験を経た企業や、社内外で特定のイメージが定着している企業であればなおさらです。
退嬰(たいえい)という言葉があります。
「あの会社は退嬰的だ」と形容されているとしましょう。
意味しているのは、旧来の価値に縛られすぎて、新たな取り組みへの意欲に欠ける危機的な状況です。
退嬰の「嬰」には「枠で囲んで外に出ない」という保守的な語義があります。
言語化も同じような性質を持っています。
英訳するなら「Define」も候補の一つとなる言語化は
「輪郭をはっきりさせる」「範囲・境界などを限定する」という意味を含みます。
限定された顧客像にとらわれすぎると、退嬰という危うい事態を招きかねません。
退嬰には「進取」という対義語があります。
前例や固定観念などにとらわれず、新しい何かに進んで取り組もうとする精神を表す言葉です。
言語化とは、定義を上書きしていくことでもあります。
「我が社の価値はここにある」「お客様はこういう方だ」を随時上書きできる柔軟性を備えながら、
時代の変化や社会環境の変化に早めに適応していけるのが理想です。
進取の精神を持ち続ければ、上書きへの抵抗は小さくなっていくでしょう。
バイアスもしくは思考停止の罠が
そこにある
退嬰や自縄自縛の罠にはまらないようにするために、経営者が日頃から意識しておきたいのが自分自身のバイアスです。
バイアスとは先入観や偏見と言えますし、思い込みや決めつけとも言えるでしょう。
悪しきバイアスは物の見方を歪めます。
人は誰しもバイアスを持っています。
悪しきバイアスによって奪われるのは、機会です。
「我が社の価値はここにある」
「お客様はこういう方だ」
いつしか疑うことのなくなったそうした認識が悪しきバイアスとして働くと、
企業価値を捉え直し、顧客像を追加更新していくチャンスやきっかけに気づけません。
言語化自体の逆機能をあらかじめ知っておき、必要以上に縛られないように気をつける。
悪しきバイアスの克服が、価値の捉え直しや新たな顧客像の言語化には欠かせません。
ありがたいことにバイアスは、その存在に気づいて意識を変えさえすれば克服できることが、科学的に証明されている。
ご自身の著作にそう記されているのは、FBIの捜査官などに「知覚の技法」を教えてきた専門家のエイミー・E・ハーマンさんです。
以下はハーマンさんの著作からの引用です。
バイアスとはものの見方を変える知覚フィルターで、行動に影響する。
人は生物学的にバイアスを持っていて、一概に悪いものばかりとはいえない。問題は、その存在を認めず、バイアスのなかだけで情報を選別し、(中略)真実に反する情報を優先させることだ。誰にでもあるバイアスに気づかないでいると、思考が型にはまって、視野の狭い人間になる。
バイアスのもうひとつの恐ろしさは、意識的にせよ無意識にせよ、周囲に伝染することだ。たとえば職場では、気づかないうちに少しずつ意識の集約が進むため、長年一緒に働いていると考え方が似てくる。(中略)だからこそ偏見につながるバイアスには注意しなくてはならない。
バイアスは、自分の心と向き合うことで確認できる。自分にはどんなバイアスがあるのだろう。(中略)自分が導いた結論は、偏見や個人の都合によって歪められていないだろうか。常に自問する姿勢を忘れてはならない。
ハーマンさんとは別の言い方をしましょう。
思考停止に陥るな、です。
言語化とは思考を深めていくことであり、ハーマンさんの言う「自分の心と向き合うこと」でもあります。
思考を深めていく言語化は、バイアスの罠から抜け出すときにも役立ちます。
顧客像を追加更新する
価値の捉え直し
「ESSENTIAL FORCE言語化」では、思考を本質まで深めていきます。
その一例として、ここでは弊社の「価値の捉え直し」を紹介しましょう。
我が社の価値はどこにある?
もともと複数の出版社に記事を提供してきた弊社の場合は、「取材して文章化した独自の成果物」が従来の価値でした。
有形の価値ということになるでしょう。
しかし、思考を奥のほうまで深めていくと、無形の価値が浮かび上がってきたのです。
取材を受けてくださった方々から頂戴してきたのは、記事そのものへの謝意だけではありません。
インタビューの問答を通して頭の整理ができた、忘れていた初心を思い出した、
取り組みの意義をしっくりくる言葉にできたなど、そうした喜びは記事の制作過程で、
とりわけインタビューを通して生まれてくるようなのです。
もしかするとプロセスにも価値がある?
この気づきから、価値の捉え直しを進めていきました。
取材のプロセスで弊社が一貫して追求してきたのは、記事化する取り組みや挑戦の本質をしっかり捉えて真価を掘り起こし、
価値を伝えながら読み手の心を動かしたいという強いこだわりです。
そうした強いこだわりが前述した喜びに繋がっているはずなので、取材というプロセスにも価値はある。
プロセスのそうした価値を発掘できずにいたのは、バイアスによって阻まれていたからでした。
長年メディアの世界でその論理に従ってきたため、成果物にしか価値はないという強い思い込みに縛られていたのです。
捉え直した本質(=プロセスにも価値はある)は、言語化をさらに進めていく起点となります。
取材のプロセスに価値があるのはなぜなのか。
問答によって思考が促されるからではないか。
別の見方をすると、独りで思考を深めていくのが難しいからではないか。
独りの思考を迫られる機会が多いのは誰だろうか。
決断を頻繁に迫られる経営者ではないか――。
たとえば職場では、気づかないうちに少しずつ意識の集約が進むため、長年一緒に働いていると考え方が似てくる。
知覚の技法を教えているエイミー・E・ハーマンさんは、そう記しておられます。
だとすれば、取材経験が豊富な社外の人間が、経営者と問答しながら思考を深めていくプロセスには、
小さくない価値があるのではないか――。
「ESSENTIAL FORCE言語化 経営支援」は、このような言語化から生まれたものでもあるのです。
言語化のスピードと
精度を上げるために
道具を使う
「新たな顧客像」を言語化していくために必要なのが、価値の捉え直しです。
「我が社の価値はここにある」をうまく捉え直して、「ここにも我が社の価値はある」と適切に言語化できれば、
顧客像の追加や更新が容易になります。
捉え直した企業価値は、新たな顧客像を言語化していく起点となります。
「こういう方もお客様だ」と言語化していく発掘の起点です。
価値の捉え直しに役立つのが、思考を本質まで深めていく言語化です。
「ESSENTIAL FORCE言語化」は、思考を深めていくための道具を取り揃えています。
道具を使うのは、スピードと精度を上げるためです。
料理に包丁などの調理器具を使うのと同様です。
キャベツを素手で千切りにする人は、どこにもいないでしょう。
思考も同じように、道具を使ったほうが楽ですし、望み通りの言語化に繋がります。
新たな顧客像を言語化できれば、もともと持っていた価値の値打ちを上げていけます。
新商品や新サービスの発掘・開拓にも繋がっていきます。
思考を助けてくれる道具は、使った分だけ経営者の頭のなかに残ります。
経営者自身がそうした道具を使いこなせるようになれば、
自縄自縛や退嬰といった避けるべき事態を招きかねないバイアスの罠から、さらに自由になれるはずです。
主要参考文献※
本テキストは、筆者(株式会社EDIMASS代表取締役・手嶋真彦)が拝読してきた文献からインスパイアされて執筆したものです。主要参考文献のほかにも多くの文献から学び、触発されてまいりましたことをここに記し、すべての文献執筆者に深い敬意と謝意を表します。
- エイミー・E・ハーマン 『観察力を磨く 名画読解』 岡本由香子訳 早川書房 2016
- ダニエル・カーネマン 『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』 村井章子訳 早川書房 2012
- セス・ゴーディン 『THIS IS MARKETING 市場を動かす』 中野眞由美訳 あさ出版 2020
新たな顧客像言語化の「効能」