EFFICACY
効能書き07
物語
言語化の「効能」
こんな症状に…
- お客様との距離をもっと縮めたい
- ファンをもっと増やしたい
こんな効き目が…
- 共感やシンパシーを生み出せる
- ロイヤルティ最大化の布石を打てる
優れた物語の3点セットは
「面白い。伝わる。動かす。」
物語には、生き生きとしたシーンが欠かせません。
色鮮やかな複数のシーンを軸に据え、必要最小限の説明を加えます。
シーンの有無が、物語とステートメント(言語化プロトタイプ6)の大きな違いです。
価値や魅力をストレートに伝えるステートメントは文中にそのための主張を含み、
主張を支える理由や根拠も不可欠なので、説明的な文章になりがちです。
たとえば、この効能書きはステートメントです。
効能を説明する文章ですから、なぜ効き目があると言えるのか、根拠をきちんと示さなければなりません。
一方、物語を制作する際は、説明過多に陥らないように気をつけます。
ステートメントにはステートメントに適した伝え方があり、物語には物語に適した伝え方があるということです。
ここでお勧めするのは、用途に応じた物語とステートメントの使い分けです。
優れた物語は理屈抜きに楽しめます。
面白いからどんどん読める。読み進めていくうちに、価値や魅力が伝わっている。
価値や魅力を伝えながら、読み手の心を大きく動かす。
面白い。伝わる。動かす。
優れた物語の特長はこの3点セットにあると、ESSENTIAL FORCE言語化では考えます。
優れたステートメントは、頭を使えば理解できるように書かれています。
念入りに読めば、価値や魅力が十分に伝わってくるでしょう。
ただし、読み進めていくハードルは高めです。説明の多い文章は読み手側の負担を増やします。
内容をきちんと把握するには、頭を働かせて筋道を辿らなければなりません。
脳を余計に疲労させる分、最後まで読んでもらえる可能性は下がります。
物語というのは、なにはともあれ楽しく読み進めてもらうための形式ですから、
説明的な叙述は減らせるだけ減らして、生き生きとしたシーンやエピソードを増やします。
気軽に読み始めて、気づけば読み終えている。これが物語形式の理想です。
優れた物語には、生き生きとしたシーンやエピソードが盛り込まれています。
生き生きとしたシーンやエピソードは、読み手の心を引きつけます。
登場人物があれこれ奮闘し、ハッとさせるようなセリフを口にするからです。
人は人に惹かれます。
抽象度の高い哲学書の類が眠気を誘うのは、観念を主語にしているからです。
物語は違います。人が主人公です。
登場人物の言動に共感し、感情移入することもあります。
観念は違います。感情移入の対象にはなりません。
ESSENTIAL FORCE言語化で制作する物語は、人が主人公で、行動や心理の描写に重きを置きます。
会話やセリフもシーンを構成する材料です。
電脳雑伎集団の平山が夫婦で訪ねてきたのは、十月のとある月曜日のことであった。
二〇〇四年、米大リーグでジョージ・シスラーの持つ年間最多安打記録をイチローが破った翌週のことである。
半沢直樹が、重要な顧客だけが通される第一応接室に出向いたとき、すでに次長の諸田祥一と森山雅弘のふたりがいて、IT企業の電脳雑伎集団を率いる平山一正社長と、その妻で同社副社長の美幸夫人の相手をしていた。
作家の池井戸潤さんによる、有名な小説の書き出しです。
このように具体的な場面を設定しておけば、足りない情報は読者が各自の想像で埋めてくれます。
多くの読者は脳内で、活字を映像に変換しているでしょう。
映像的な文章のほうが、観念的な文章よりもはるかに読みやすいのは、言うまでもありません。
冒頭からすっと読める。
続きが知りたくて読み続ける。
読み続けているうちに価値や魅力が伝わっている。
物語には物語のこうした伝え方があるわけです。
感情の分かち合いが
心を大きく動かす
面白さを優先させる物語で、もっとも大切なのは冒頭です。
人気作家である池井戸潤さんの作品ではない、未知の物語の場合は、
読者が実際に読み進めていかないと面白いかどうかがわかりません。
冒頭で話に引き込めなければ、即座にゲームセットを宣告される。それぐらいの覚悟が必要です。
それゆえ冒頭には、続きが読みたくなる吸引力の強いシーンやエピソードを配します。
即座に成否が決まるメッセージ(言語化プロトタイプ5)と同じで、言葉そのもののインパクトも必要です。
冒頭の書き出しには、こだわり抜きます。
面白い物語には、読者を飽きさせない工夫も欠かせません。
話の展開に起伏が少なかったり、説明的な地の文が長く続きすぎたりしたせいで、
途中でゲームセットを宣告されてしまうのを避けるための工夫です。
生命線を握っているのが、全体の構成であり話の展開の仕方です。
しっかり順序立てた筋道がステートメントをステートメントたらしめるのに対し、
物語ではシーンを一気に切り替える場面転換などを活用します。
重要なのは筋道よりも、読み手を飽きさせない意外性や驚きです。
大胆な場面転換には、改めて冒頭を設けるような効果が期待できます。
読者に興味・関心を持たせたまま、話の続きが読みたくなるこうした仕掛けを随所に施します。
面白いから、読み進める。
読み進めていくうちに、伝えたい価値や魅力が伝わる。
価値や魅力を伝えながら、読み手の心を大きく動かす。
面白い。伝わる。動かす。
繰り返しになりますが、この3点セットこそ、ESSENTIAL FORCE言語化が制作する物語の本質であり特長です。
心を大きく動かす物語の肝となるのが、シーンやエピソードの描き方です。
読者が脳内で色鮮やかな映像に変換できる場面を活写するだけでなく、
登場人物の心理を時には微に入り細を穿つまで描写します。
描写するのは心理であり、感情の動きです。
感情の動きを言語化すると、読者は物語を自分の経験に重ね合わせやすくなります。
感情は共有しやすいものだからです。
頭で理解するたとえば思想や哲学の共有と比べると、心を動かす感情の共有ははるかに容易です。
それこそ瞬時に分かち合えます。
例を挙げれば、喪失に伴う悲しみや苦しみといった感情の分かち合いです。
誰かの悲しみや苦しみが、自分の悲しみや苦しみであるかのように胸に迫ってくる。
なぜならば大切な存在を失った者の喪失感は、おそらく全人類に共通のものだからです。
価値観が異なる人との議論は、多くの場合、平行線を辿りつづけます。
しかし感情は、価値観が異なる人同士の間でも、即座に分かち合えます。
笑顔や楽しさは伝染するものですし、もらい泣きという反応もよく起こります。
登場人物に感情移入しながら読む物語は、必然的に続きが気になる物語になっています。
感情の分かち合いは、読者が物語を読み進めていくための強い推進力をもたらします。
心を大きく動かす可能性もぐっと高まります。
優れた物語は、心を大きく動かすファクターを揃えています。
たとえば――。
苦難に繰り返し見舞われても、正義を追求していく主人公。
時には挫けそうになる主人公を、陰日向になって支える仲間たち。
試練を乗り越え、何事かを成し遂げ、理想や目的へと近づいていく。
もちろん不可欠なのが、実話に基づくそうした物語に、救われたり、励まされたり、心を動かされる読み手の存在です。
物語の要所要所で、
愛、信頼、再生、勇気、希望といった普遍的な共通価値を具現化しているシーンやエピソードが、
読み手の心を大きく動かします。
主人公が発するハッとさせるようなセリフが、読者の心を大きく動かす強いメッセージとなっています。
英語のMessageは「物語などで作者・話者が伝えたいこと」を意味する言葉でもあるそうです。
多くの読者の心に響く、あるいは特定の読者の心に刺さるメッセージも、心を大きく動かすファクターです。
心を大きく動かすファクターが揃っていればいるほど、面白く、最後まで読まれやすい物語となっているはずです。
人と人の距離を一気に縮めるのが
共感とシンパシー
人は誰もが、自分の物語の主人公です。
辿ってきた足跡はもちろん全員違っていて、経験してきた出来事もさまざまです。
それでも、人生を通して味わってきた喜びや悲しみなど感情の記憶は、自分以外の人たちと分かち合えます。
分かち合えずにいるのだとすれば、伝え合う機会を作ってこなかったからでしょう。
「世のため、人のために」という経営者の強い思いや姿勢は、物語の形でも伝えられます。
強い思いの原点にどんな出来事があったのか。
そのとき、どんな感情に駆り立てられたのか。
独自の挑戦や取り組みにどう向き合ってきたのか。
思考を本質まで深めて、言語化していきます。
とりわけ苦難への向き合い方は、その人の人となりを雄弁に物語ります。
苦渋をなめた、苦悩させられる出来事にどのような姿勢で立ち向かい、乗り越えようとしてきたか。
あるいは乗り越えようとしているか。
言語化しなければ伝わらない、そうした感情や心の動きが物語のなかに描かれていると、
読み手は共感しやすくなりますし、親近感を、つまりはシンパシーを感じやすくもなります。
共感やシンパシーは、人と人の距離を一気に縮めます。
生まれ育った環境も、辿ってきた足跡も全員違っているのですから、価値観は違っていて当たり前です。
価値観の違いという垣根を壊すのが、共感やシンパシーです。
共感やシンパシーで強く繋がっている人間関係は、そう簡単には壊れません。
共感できる、シンパシーを感じられる経営者の人となりや生き方が、
多少なりとも言語化され可視化されていると、社内外に安心感が生まれます。
それだけではありません。
経営者が醸し出す安心感には、企業の価値や魅力を際立たせ、
共感や共鳴をより大きなものへと膨らませる絶対的な力があるからです。
物語を通した価値や魅力の伝え方は、ステートメントと比べるといささか遠回しな伝え方です。
生き生きとしたシーンやエピソードを描くには、材料を十分に集めて、そこから厳選し、
登場人物の言動に彩りを加えていく技量も不可欠です。
制作のプロセスは増えますし、ややストレートではない表現にもなりますが、
優れた物語は読み手の心に働きかけて、共感やシンパシーという大きな力を生み出せます。
感情資本とも表現できる共感やシンパシーを増やし、
企業の価値や魅力を際立たせる唯一無二の物語を、ぜひご活用いただきたい。
ESSENTIAL FORCE言語化が制作する物語によって、あなたの会社のファンを増やし、
社内外からのロイヤルティ(愛着)を最大化していくための、重要な布石を打てると確信しています。
主要参考文献※
本テキストは、筆者(株式会社EDIMASS代表取締役・手嶋真彦)が拝読してきた文献からインスパイアされて執筆したものです。主要参考文献のほかにも多くの文献から学び、触発されてまいりましたことをここに記し、すべての文献執筆者に深い敬意と謝意を表します。
- 池井戸潤 『ロスジェネの逆襲』 ダイヤモンド社 2012
- アントニオ・R・ダマシオ 『生存する脳 心と脳と身体の神秘』 田中三彦訳 講談社 2000
物語言語化の「効能」