EFFICACY
効能書き02
企業文化
言語化の「効能」
こんな症状に…
- 職場に活気がない
- 自主性に乏しく、指示待ちが蔓延
- 一見、無症状
こんな効き目が…
- 安心して挑める土壌ができる
- 社内の改善・改良が活発に
- 商品・サービスの質を上げていける
不健全な企業文化は
リスクでしかない
力強く、企業が前進していくための両輪となるのが「企業理念」と「企業文化」です。
どれだけ優れた企業理念を掲げていても、企業文化が不健全であれば、強い推進力は生まれません。
貧弱な土壌をいくら耕そうと、豊かな実りを望めないのと同じです。
わたしたちが提供しているのは「ESSENTIAL FORCE言語化」です。
ここでも思考を「本質」まで掘り下げます。
企業文化は「企業風土」とも表現できます。
風土という言葉を分解すると、風と土です。どのような土壌の上に、どのような風が吹いているか。
そこで生きる人々の思考や行動に大きな影響を及ぼすのが風土であり、企業に当てはめれば企業文化と言えるでしょう。
効能を持つ物事には、ポジティブに働く「機能」だけでなく、ネガティブに作用する「逆機能」も含まれているものです。
逆機能が優位になっている企業文化は、それこそブレーキとして作用し、企業の前進をなにかと妨げます。
不健全な企業文化を放置しておくのは、大きなリスクでしかありません。
職場に活気がない。
自主性に乏しい社員が多く、指示待ちが蔓延している。
もしもこんな症状が現れているなら、一刻も早い改善が望まれます。
一見、無症状という実は深刻な症状もあるでしょう。
表面上健康そうに見えているだけで、内実は甚だしく不健康なのかもしれません。
企業文化が不健全だと――土壌が貧弱で、空気が淀んでいると――、何が育たないのでしょうか。
人とアイデアです。
企業の命運を大きく左右するのが、人とアイデアの成長です。
しかし、土壌が成長に適していなければ、種を蒔いても十分には育ちません。
空気が淀んでいれば、そのまま枯れてしまうかもしれません。
改善の第一歩は、企業文化の不健全さに、経営者自身が気づくことです。
気づいているなら即座に、改善に乗り出すことです。
気づいて改善に乗り出せば、劇的な変化や効果も望めます。
なぜならば、企業文化とは人為的に築かれた環境だからです。
人が作った環境ですから、人の力で大きく変えられます。
人とアイデアが成長していく
企業風土とは
優れた企業文化は、優れた企業理念と同様に、ポジティブに機能します。
風通しのよい、土壌の豊かな職場では、社員同士が存分に切磋琢磨できるからです。
優れた企業文化を醸成していくためには、真っ先に土壌を改良しなければなりません。
必要なのは「心理的に安全な」土壌です。
職場での「心理的安全性」に関する先駆的な研究で知られ、ハーバード大学でも教鞭を執られたエイミー・C・エドモンドソンさんは、
ご自身の著作で次のように述べています。
私はこれまで二〇年にわたって研究を行い、(中略)職場でパフォーマンスに差が生じるのは、私が「心理的安全性」と呼ぶものが一つの要因であることを突きとめた。
フィアレスな(不安も恐れもない)組織とは、知識集約的な世界にあって、対人関係の不安を最小限に抑え、チームや組織のパフォーマンスを最大にできる組織のことである。
心理的安全性とは、大まかに言えば「みんなが気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる文化」のことだ。より具体的に言うなら、職場に心理的安全性があれば皆、恥ずかしい思いをするんじゃないか。仕返しされるんじゃないかといった不安なしに、懸念や間違いを話すことができる。
心理的に安全な土壌の職場では、誰もが自由に物を言えるということです。
上司と異なる意見を表明しても、上司に恥をかかせたことにはなりません。
多くの同僚と違った意見を述べたとしても、そのせいで職場に居づらくなったり、嫌な目に遭わされたりすることもありません。
一人だけ変わった意見を切り出しても、ないがしろにはされません。
いろんな意見が大切であり、同時に意見は意見にすぎないと、誰もが認識しています。
人格とは切り離されているのです。
心理的に安全な風通しの良い職場では、意見の衝突が、むしろ歓迎されます。
建設的な衝突は、人やアイデアを大きく成長させるからです。
自分が「正しい」と信じる意見に、同僚からの「反対」意見が衝突する。
その職場に「正」と「反」を「合わせられる」だけの豊かな風土があれば、正反合の弁証法的昇華が可能となり、
当事者が視野を広げたり、より良いアイデアが生まれてきたりするわけです。
人が成長し、アイデアも成長すれば、商品やサービスの質も上がっていくでしょう。
多様性が職場でも大切なのは、建設的な衝突が生まれやすくなるからです。
ここで言う多様性とは、物の見方や考え方のダイバーシティです。
心理的に安全な職場では、「みんなが気兼ねなく意見を述べることができ」ます。
ダイバーシティに溢れた職場なら、さまざまな意見がぶつかり合うでしょう。
多様性に満ちた切磋琢磨の結果、アイデアに磨きが掛かります。
そのプロセスで、関わった一人ひとりが物の見方を広げていきます。
物の見方が広がれば、同じ局面での選択肢も増えているはずです。引き出しが増えているということです。
器そのものが大きくなっているかもしれません。
人もアイデアも成長する、しかも「自分らしくいられる文化」がそこにあるわけです。
心理的安全性とは文化のことだ(一部を抜粋)
エイミー・C・エドモンドソンさんはそう記されています。
社員同士が思う存分、切磋琢磨できる文化です。
切磋琢磨しながらお互いの特性も把握できます。特性には特長も含まれています。
特長を活かし合う相乗効果も期待できるでしょう。
相乗効果が高まれば、チーム力や組織力も高まっているはずです。
失敗は成功のプロセスという認識が共有されていれば、改善や改良も進みます。
心理的に安全な職場では、ミスを隠す必要がなくなるので、原因や再発防止策を共有しやすくなるからです。
同僚への助言や、フィードバックへの抵抗感も薄れます。
逆もまたしかりで、助言やフィードバックを受けることへの抵抗感も薄れます。
各自の成長に繋がる助言やフィードバックが増えていけば、独り善がりの判断や行動が全体的に減っていくはずです。
恐怖や不安が渦巻く職場では、言葉を呑み込む社員が増えていきます。
一見、平穏に見えたとしても、表面だけの平穏です。
衝突や対立が頻繁に起ころうとも、後を引かない心理的に安全な職場では、同僚からも失敗からも学べます。
土壌が豊かで、風通しも良ければ、誰もが成長していきます。
暗黙の了解を変えるために
必要なのが言語化だ
企業文化は、自然環境ではありません。
人為的な風土です。
人によって作られた空気や土壌なので、その気になりさえすれば、変えていくための第一歩は一瞬で踏み出せます。
まずは経営者が決断しなければなりません。
「心理的に安全な職場」を作ろうと。
文化は通常、暗黙の了解の上に成り立っています。
暗黙の了解に支配されているから変えにくいのです。
変えるためには、言語化が必要です。
言語化するのは、心理的に安全な職場を保証していくための「原則」です。
原則が明文化されると、透明性が高まります。
暗黙から透明への変化です。
明文化された原則を職場の全員で共有し、文化を上書きしていきます。
もっとも重要なのは、経営者自身が「原則」を体現していくことです。
誰よりも影響力の強い経営者が、率先して原則の体現者となれば、企業文化は変わっていきます。
優れた企業は例外なく「より良い社会のために」「より良い暮らしのために」存在しています。
「より良い社会のために」「より良い暮らしのために」が先にある、目的志向の企業です。
切磋琢磨が目的ではありません。
「より良い社会のために」「より良い暮らしのために」建設的な衝突を歓迎するわけです。
建設的な衝突が起こるのは、高い目標を掲げているからでもあるでしょう。
育みたいのは、高い目標に安心して挑める企業文化です。
醸成された「心理的に安全な」企業文化、その礎(いしずえ)となる原則の開示は、人材の獲得にも好影響を及ぼすでしょう。
「より良い暮らし」には、職場で過ごす時間も含まれています。
過剰に空気を読まなければならない、言葉を呑み込まなければならない職場と、
自由に意見を述べることができ、しかも自分らしく居られる職場。
どちらが望ましい職場か、言うまでもない。
多くの人がそう断言できる社会を作っていくためにも、
健全な優れた企業文化の下で独自の価値を発揮できる企業が増えていきますように。
そう願ってやみません。
主要参考文献※
本テキストは、筆者(株式会社EDIMASS代表取締役・手嶋真彦)が拝読してきた文献からインスパイアされて執筆したものです。主要参考文献のほかにも多くの文献から学び、触発されてまいりましたことをここに記し、すべての文献執筆者に深い敬意と謝意を表します。
- エイミー・C・エドモンドソン 『恐れのない組織 「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』 野津智子訳 英治出版 2021
- エイミー・C・エドモンドソン『チームが機能するとはどういうことか 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ』 野津智子訳 英治出版 2014
- デヴィッド・ボーム 『ダイアローグ 対立から共生へ、議論から対話へ』 金井真弓訳 英治出版 2007
- フレデリック・ラルー 『ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』 鈴木立哉訳 英治出版 2018
- パティ・マッコード 『NETFLIXの最強人事戦略 自由と責任の文化を築く』 櫻井祐子訳 光文社 2018
- マーク・ベニオフ&モニカ・ラングレー 『トレイルブレイザー 企業が本気で社会を変える10の思考』 渡部典子訳 東洋経済新報社 2020
- 秦卓民 『奇跡の組織 「最高の働き方」を導き出すセムコスタイル5つの原則』 光文社 2019
- ベン・ホロウィッツ 『WHO YOU ARE 君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる』 浅枝大志・関美和訳 日経BP 2020
- レイ・ダリオ 『PRINCIPLES 人生と仕事の原則』 斎藤聖美訳 日本経済新聞出版社 2019
- ケン・シーガル 『Think Simple アップルを生みだす熱狂的哲学』 高橋則明訳 NHK出版 2012
- アトゥール・ガワンデ 『アナタはなぜチェックリストを使わないのか? 重大な局面で"正しい決断"をする方法』 吉田竜訳 晋遊舎 2011
- チャールズ・デュヒッグ 『習慣の力 新版』 渡会圭子訳 早川書房 2019
- ロイ・バウマイスター&ジョン・ティアニー 『WILL POWER 意志力の科学』 渡会圭子訳 インターシフト 2013
- ジャスティン・ソネンバーグ&エリカ・ソネンバーグ 『腸科学 健康な人生を支える細菌の育て方』 鍛原多惠子訳 早川書房 2016
- 木村秋則・石川拓治 『土の学校』 幻冬舎 2015
- ジョン J. レイティ&リチャード・マニング 『GO WILD 野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス』 野中香方子訳 NHK出版 2014
- エリン・メイヤー『異文化理解力 相手と自分の真意がわかるビジネスパーソン必須の教養』 田岡恵監訳 樋口武志訳 英治出版 2015
- 吉森保 『LIFE SCIENCE 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』 日経BP 2020
- トニー・シェイ&ザッポス・ファミリー&マーク・ダゴスティーノ 『ザッポス伝説2.0 ハピネス・ドリブン・カンパニー』 本荘修二監訳 矢羽野薫訳 ダイヤモンド社 2020
企業文化言語化の「効能」